微細な磁鉄鉱包有物をもつケイ酸塩鉱物単結晶は、過去の地球磁場を記録する信頼度の高い媒体として着目されている。深成岩などの試料から鉱物単結晶を分離して行う古地磁気測定は、特に長周期の地球磁場変動の解明や地球外試料が記録している古磁場の復元において重要な手法であるといえる。しかし、単結晶試料はは従来の古地磁気研究の主要な試料と比べて試料のサイズと磁化強度が小さく、精度の高い測定に工夫を要することもあり、現在のところ単結晶古地磁気研究は世界でもわずか数グループの研究者によって行われているのみである。そ… もっと読む
2022年1月15日に発生したフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火は大気圏や電離圏に激しい擾乱を引き起こした。この噴火では大気の圧縮性が大気圏-電離圏擾乱に重要な役割を担っていると考えられるが、圧縮性に関連した現象はこれまで十分に調べられていなかった。我々は、大気の圧縮性に起因する現象を詳細に調べるために、軸対称3次元非静力学平衡大気モデルと全大気圏-電離圏結合モデルGAIAを用いた。その結果、このシミュレーションが衝撃波や大気と電離圏中の音波共鳴による振動など大気の圧縮性によるさまざまな… もっと読む
EPS誌ではeditorの推薦に基づき、優れた論文をハイライト論文として毎年表彰しています。 2023年のハイライト論文は以下の12編に決定しました。 以下では受賞論文を出版順に並べています。 Pacôme Delva, Zuheir Altamimi, Alejandro Blazquez, et al., GENESIS: co-location of geodetic techniques in space, Earth Planets Space 75:5 (2023) https://… もっと読む
科学論文の水準を維持するためには、優れた査読は欠かせないものです。 EPS誌では2013年から、査読者の中から優れた査読者を表彰しています。 受賞者は、editorial board memberおよび特集号のguest editorの推薦に基づいて毎年決定します。 Jaroslav Chum Guozhu Li Charles Lin Masaki Matsushima Atsuki Shinbori Chihiro Tao John Tarduno Fumiaki Tomita Yosuke… もっと読む
2022年1月15日に発生したフンガ・トンガ・ハアパイ火山の爆発的噴火は、対流圏に強い衝撃波と気圧波を発生させました。この変動による影響は大気圏から電離層までの広範な領域まで及んでいました。本論文は、これまでの地上観測と衛星観測のデータ解析から得られた電離圏擾乱の特徴を包括的にレビューし、トンガ火山噴火から何を学んだのかをまとめています。さらに、SuperDARN HOPレーダー(https://cicr.isee.nagoya-u.ac.jp/hokkaido/)とあらせ衛星(https://… もっと読む
赤道プラズマバブル(EPBs)は、低緯度および赤道域で見られる電離圏のプラズマが極端に減少する現象です。EPBs は、電離圏を通過する様々な通信電波の伝播に影響を与え、GPS などの全球衛星測位システムの障害や精度低下を引き起こすことが知られています。したがって、宇宙天気予報の高精度化のために、EPBs の定常的なモニタリングが強く求められてきました。本論文は、航空機のナビゲーションに使用される VHF 帯電波の受動的な観測を利用して EPBs をモニタリングする新しい方法を提案しています。本論… もっと読む
南海トラフの浅部スロー地震は日向灘、室戸岬沖、紀伊半島南東沖の3つの限られた地域でスポット的に発生します。しかし、南海トラフの浅部プレート境界に沿って沈み込む堆積物の(a–b)の値は、深さ10 km以浅においておおよその場合で正の値を示します。これは、プレート境界浅部において自発的に地震のようなすべり現象を起こすことが難しいことを意味します。浅部スロー地震発生には、図のようにプレート境界周辺に不均質に分布した間隙流体とその移動現象が重要です。それらの地域で、周期的な間隙流体の移動が発生することで… もっと読む